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コラム

フィリピンのネガティヴリストとアンチ・ダミー法についての一考察

2023年1月15日

🟧フィリピンは、外国企業による投資を歓迎し促進しています。しかし、機密性の高い産業や保護対象となる活動には他の国々と同様外国籍の者や外国企業からの投資には規制がかけられます。

 

このような国営の産業及び活動は、ネガティブリストとしてまとめられています。

 

🟧ネガティブリストはリストAとリストBに分類されています。

 

リストA:外国人による投資・所有が憲法および法律により禁止・制限されている業種。

 

リストB:安全保障、防衛、公衆衛生および公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由として、外国人による投資・所有が制限される業種(外国資本による出資比率を40%以下に制限)

 

フィリピンにおける現地法人には、業種により外国資本比率規制があります。

この外国資本比率を計算する際、従前までは、総発行株式数をベースにした外国資本比率の算出が認められてきました。

(すなわち、フィリピン人向けに議決権のない優先株を発行することにより、議決権を与えずに保有比率のみを満たすことが可能であった。しかし、2013年5月20日、フィリピン証券取引委員会(SEC)はガイドライン最終版(SEC Memorandum Circular No. 8)を発行し、議決権の有無にかかわらずすべての発行済み株式総数に対してフィリピン保有比率を満たすことを求めた。このガイドラインの骨子は次のとおり。

  1. フィリピン保有比率の算出には、次のa.b.両方の株式数において条件を満たす必要がある。
    • 取締役(Director)選任のための議決権つき発行済み株式総数
    • 取締役(Director)選任のための議決権つきおよび議決権なし発行済み株式総数
  2. 会社秘書役(Corporate Secretary)は、a.b.の条件を満たしているかどうか、常にモニターすることが求められる。
  3. 1. 2.の条件を満たさない企業には、SEC Memorandum Circular No.8の発効日より1年間の猶予が与えられ、その期間内に条件を満たすことが求められる。SECは、例外として猶予期間を延長する可能性があるが、フィリピン保有比率を満たさない企業および企業役員については、1991年外国投資法(共和国法第7042号、1996年改正)において罰則が規定されている。)

 

 

出資比率

ネガティブリストでは外資出資比率が100%禁止、25%・30%・40%以下に制限されている業種がそれぞれ記載されています。

このネガティブリストの出資規制業種に該当しなければ外国資本の出資比率の上限規制はありません。(100%外資可能)。

(ただし建設業など、免許の取得が別途必要な業種・業界の場合、外資制限が課されるケースもあるため、別途事前確認が必要です。)

 

2013年3月20日、SECは、覚書回覧第8-2013号を発行した。同回覧は、憲法、外国投資法(Foreign Investment Act:FIA)その他の現行法によって、全部または一部がフィリピン人に限定されているような特定領域分野に従事するすべての会社に適用される。本回覧は、憲法を遵守し、会社の法的所有権者であるための必要条件を定めることを目的としている。ここでは、特定の会社に必要なフィリピン人の資本比率は、取締役会での議決権のある発行済み株式の合計数と、取締役会で議決権の有無を問わない発行済み株式の合計数の両方に適用されるとした。現行法が適用されている企業で本規定に従っていない場合、本回覧の発行から1年の移行期間が与えられる。本規定に従わない個人または会社の役員は、1991年外国投資法第14節の規定により罰せられる。

2013年8月8日、SECは、覚書回覧第14-2013号を発行した。本回覧は、払込資本金の支払いで不動産を使用する場合の先のガイドラインを改定するもの。ここでは、会社設立の際の払込資本金の支払いが土地による場合、土地の譲渡を受けた者の名で所有者移転証明を、申請が受理された日から120日以内にSECに提出しなければならないとした。払込資本金の支払いが土地以外の不動産による場合には、譲渡を受けた者の名で、登録移転証明を、申請が受理された日から90日以内にSECに提出しなければならないとした。)

 

🟧フィリピンでは、国営化の規則は厳格に執行されており、この規則に違反した場合、関連するフィリピン法に基づき重い罰則が科されます。なかでも、フィリピンに投資しようとしている外国企業が特に注意を払うべき重要な法律の一つが、アンチ・ダミー法です。

 

🟧アンチ・ダミー法(共和国法第108号)は1936年という早い時期に制定されました。古い法律ではありますが、現在でも幅広く運用されています。このアンチ・ダミー法は、国営化規則の違反者に対し厳格な刑事罰を科すことにより、フィリピン国籍を有する者及び内国企業にのみ認められている権利、経営権及び特権が、資格のない外国籍の者や外国企業の手に渡るのを防いでいます。

 

アンチ・ダミー法で罰せられる具体的な行為を以下に挙げます。

例えば、フィリピン国内の土地の所有は、フィリピン国籍を有する者又はフィリピン資本60%以上の内国企業にのみ認められています。この禁止規定を回避するため、外国籍の者がフィリピン国内の土地を購入する際に、その土地の登記(又は、貸付を循環させて)だけをフィリピン国籍を有する配偶者又はビジネスパートナーの名義で行い、そのフィリピン国籍を有する者は、その外国籍の者の委託を受けて土地を管理するということがあります。

 

🟧このような取り決めはアンチ・ダミー法で禁止されており、「ダミー」である外国籍の者もフィリピン国籍を有する者も刑事訴追の対象となり得ます。

フィリピン法上、国営事業の運営法人のフィリピン資本比率は、60%以上でなければなりません。

 

アンチ・ダミー法に違反した場合、5年以上15年以下の懲役と、資格のない外国籍の者又は外国企業が享受又は取得した権利、経営権又は特権の価値以上の罰金が科されます。さらに、同法に違反した企業又は団体は、適切な裁判所手続終了後に解散させられます。

アンチ・ダミー法に基づく訴追を促すため、同法では、被疑者の有罪確定につながる情報を当局に最初に提供した者に対し、被疑者が有罪確定後に科される罰金の25%に相当する金額が報酬として与えられると規定されています。